「つまり―私は思うんだけれど,自分がいつかは死んでしまうんだとわかっているからこそ,人は自分がここにこうして生きていることの意味について真剣に考えないわけにはいかないんじゃないのかな.だってそうじゃない.いつまでもいつまでも同じようにずるずると生きていけるのなら,誰が生きることについて真剣に考えたりするかしら.そんな必要がどこにあるかしら.もしたとえ仮に真剣に考える必要がそこにあったとしてもよ,『時間はまだたっぷりあるんだ.またいつかそのうちに考えればいいや』ってことになるんじゃないかな.でも実際にはそうじゃない.私たちは今,ここでこの瞬間に考えなくちゃいけないのよ.(中略),だから私たちが進化するためには,死というものがどうしても必要なのよ.私はそう思うな.死というものの存在が鮮やかで巨大であればあるほど,私たちは死にもの狂いでものを考えるわけ.」(村上春樹,ねじまき鳥クロニクル第2部予言する鳥編,新潮文庫,Pp162-163より引用)
が一番印象に残った.世界が止まってしまわないように巻くねじまき鳥の声は,生死にからむ場面で聞こえてくる傾向があるように思う.ねじまき鳥の声が聞こえてくる度に,自分自身は生きることや死ぬことに対してどのように価値を置いているのかを考えさせられた.いつもは読み終えた本をもう一度読むことなどないけれど,もう一度読んでみようかな.と思える作品だった.
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